<※シリアスモードです>
結局、わたしたちは、よその交番で自分ちの駐在所を尋ねるという恥をさらし、やっとこ家にたどりついた。
早退の意味はまったくなくなっていて、すでに午後4時。
心労のナビゲーションは、眠気をふきとばした。
こりゃ花さんが助手席いてもたどりつかないわ・・・。
ケン坊は、かっこ悪いという理由で、駐在所よりずいぶんと前でわたしを降ろした。
かっこ悪い以前にもっといろいろあると思うけど。
「そいじゃ、お嬢さん!また会いやしょう!」
「うん!ありがとー!ケン坊!」
一応、バイパスまでの道のりを書いてあげたけど、もどれるのだろうか?マリオ。
わたしは、とるものもとりあえず、パトパトの小屋へ直行した。
パトパトの小屋には
「!」
「あ。愛ちゃん。おかえり」
なんと憧れの花さん!
「ど、どうしたんですか?」
「え?夕子ちゃん学校行ってる間、暇でしょ?それで」。
「えっと。どうやって・・・」。
「夕子ちゃんのママチャリ借りて乗って来たの」。
「ママチャリ?」
「あ~~~。自転車ね。自転車。まちがってもママチャリには乗らないから」。
「あ!ですよね~~~。ですよね」。
「ママチャリは 飲んでも乗らない 乗りたがっても乗せない」。
大人の標語だ・・・(赤面)。
基本、花さんはママチャリがあんまり気に入っていないようだ。
あ、ここで言うママチャリは、乗らないママチャリのことで、乗るママチャリのことではない。
ねんのため。
「このヤギね?久保のつれてきたってやつ」。
「クボ?」
「え?知らなかったの?」
わたしは、ずっと夕子ちゃんのお兄様が連れて来たと信じていた。
なんてったって、パトパトには『拾得物届け』がある。
パピィからは、ママチャリが連れてきたことになっている。
パトパトは、立ってこそいなかったけど、エサもちゃんと食べているし、かなり元気に見える。
「よかったね。ヤギ元気になって」。
「はい。あ・・・そうそう!」
わたしは、ついさっきのケン坊の大活劇と、その顛末を話した。
「え!またやらかしたの?叔父さん!」
「また・・・・?」
「うーん。それはやっかいねぇ」。
「やっかいって言うと?」
「叔父さんは古いタイプだからねー。今の若いのって違うでしょ?ねちっこいって言うか」
「?」
「気をつけたほうがいいよ。愛ちゃん。お父さんに言っといたほうがいいかも」。
「そう・・・ですね」。
「わたしたちの頃よりは、だいぶ陰湿だからねー。今の不良って」
確かに、次になにかあってもケン坊はいない。
しかもひとりは、わたしを「駐在所の娘」って知ってた。
面は割れてる。
でも、とてもパピィには話せそうもない。
夕子先生がやってくるまでの間、花さんはミントチョコのつくりかたを教えてくれた。
あたりまえだけど、花さんは、お菓子作りがとってもうまい。
持って来てくれた芸術的チョコレートが、鍋の中で溶けていく様は、いささかもったいなかったけど、さすがに元がいいので舐めただけでもおいしい!
「塩入れるんですか?」
「そうそう。隠し味でね。ココアも入れるでしょ?」
「あ~~~。なるほど~~~」
「ミントは強いからね。あんまり入れちゃダメ。鼻にちょっと抜けるくらいでいいの」。
わたしは、教えられている間中、こんなお姉さんがいたらいいのに、って。
ずっと考えていた。
チョコがおおよそ仕上がった頃、夕子先生がやって来た。
パピィもそれに合わせたように帰宅。
ここ数日、駐在所はにぎやかだ。
うれしい。
パピィの「住民への片思い」が、なんでなのか少しわかった気がした。
わたしには
パトパトが残ったわずかな命を使って、
「ママチャリの時代」を駐在所に連れて来たんだって
そう思えてならなかった。
夕子先生の目的は、やはり涼太のことだった。
「そんなに似てるのか?」
と、パピィ。
「ええ・・・。目をうたがいましたわ」。
「親戚かなんかなのかしら?」
と、お母さん。
お母さんも知ってるんだ・・・涼太のソックリさん。
「いえ。血縁ではないようです」。
やはり涼太そのものではなく、涼太が誰かに酷似しているらしい。
「愛のひとつ下って言ってたよな?」
「え?うん」。
いきなりふられて、わたしは突飛な声で返事をした。
「はい。年齢も違うので、一応誕生日を聴いてみたんです」。
「で?」
「それが・・・。兄の卒業した年の・・・・」
「なんだって!?」
日付を聴いたパピィは、目をまるくした。
「それって・・・・ひょっとして・・・・!」
お母さんも驚いてる。
それがどういう日か、わたしにはわからなかった。
けれど、パピィや夕子先生にとって、たいへんな日であることだけは、わかった。
「はい。間違いありません。ちょうど兄が東京に発った日でしたので、よく覚えているんです」。
<本日3話連続です。続けてどうぞ→>
結局、わたしたちは、よその交番で自分ちの駐在所を尋ねるという恥をさらし、やっとこ家にたどりついた。
早退の意味はまったくなくなっていて、すでに午後4時。
心労のナビゲーションは、眠気をふきとばした。
こりゃ花さんが助手席いてもたどりつかないわ・・・。
ケン坊は、かっこ悪いという理由で、駐在所よりずいぶんと前でわたしを降ろした。
かっこ悪い以前にもっといろいろあると思うけど。
「そいじゃ、お嬢さん!また会いやしょう!」
「うん!ありがとー!ケン坊!」
一応、バイパスまでの道のりを書いてあげたけど、もどれるのだろうか?マリオ。
わたしは、とるものもとりあえず、パトパトの小屋へ直行した。
パトパトの小屋には
「!」
「あ。愛ちゃん。おかえり」
なんと憧れの花さん!
「ど、どうしたんですか?」
「え?夕子ちゃん学校行ってる間、暇でしょ?それで」。
「えっと。どうやって・・・」。
「夕子ちゃんのママチャリ借りて乗って来たの」。
「ママチャリ?」
「あ~~~。自転車ね。自転車。まちがってもママチャリには乗らないから」。
「あ!ですよね~~~。ですよね」。
「ママチャリは 飲んでも乗らない 乗りたがっても乗せない」。
大人の標語だ・・・(赤面)。
基本、花さんはママチャリがあんまり気に入っていないようだ。
あ、ここで言うママチャリは、乗らないママチャリのことで、乗るママチャリのことではない。
ねんのため。
「このヤギね?久保のつれてきたってやつ」。
「クボ?」
「え?知らなかったの?」
わたしは、ずっと夕子ちゃんのお兄様が連れて来たと信じていた。
なんてったって、パトパトには『拾得物届け』がある。
パピィからは、ママチャリが連れてきたことになっている。
パトパトは、立ってこそいなかったけど、エサもちゃんと食べているし、かなり元気に見える。
「よかったね。ヤギ元気になって」。
「はい。あ・・・そうそう!」
わたしは、ついさっきのケン坊の大活劇と、その顛末を話した。
「え!またやらかしたの?叔父さん!」
「また・・・・?」
「うーん。それはやっかいねぇ」。
「やっかいって言うと?」
「叔父さんは古いタイプだからねー。今の若いのって違うでしょ?ねちっこいって言うか」
「?」
「気をつけたほうがいいよ。愛ちゃん。お父さんに言っといたほうがいいかも」。
「そう・・・ですね」。
「わたしたちの頃よりは、だいぶ陰湿だからねー。今の不良って」
確かに、次になにかあってもケン坊はいない。
しかもひとりは、わたしを「駐在所の娘」って知ってた。
面は割れてる。
でも、とてもパピィには話せそうもない。
夕子先生がやってくるまでの間、花さんはミントチョコのつくりかたを教えてくれた。
あたりまえだけど、花さんは、お菓子作りがとってもうまい。
持って来てくれた芸術的チョコレートが、鍋の中で溶けていく様は、いささかもったいなかったけど、さすがに元がいいので舐めただけでもおいしい!
「塩入れるんですか?」
「そうそう。隠し味でね。ココアも入れるでしょ?」
「あ~~~。なるほど~~~」
「ミントは強いからね。あんまり入れちゃダメ。鼻にちょっと抜けるくらいでいいの」。
わたしは、教えられている間中、こんなお姉さんがいたらいいのに、って。
ずっと考えていた。
チョコがおおよそ仕上がった頃、夕子先生がやって来た。
パピィもそれに合わせたように帰宅。
ここ数日、駐在所はにぎやかだ。
うれしい。
パピィの「住民への片思い」が、なんでなのか少しわかった気がした。
わたしには
パトパトが残ったわずかな命を使って、
「ママチャリの時代」を駐在所に連れて来たんだって
そう思えてならなかった。
夕子先生の目的は、やはり涼太のことだった。
「そんなに似てるのか?」
と、パピィ。
「ええ・・・。目をうたがいましたわ」。
「親戚かなんかなのかしら?」
と、お母さん。
お母さんも知ってるんだ・・・涼太のソックリさん。
「いえ。血縁ではないようです」。
やはり涼太そのものではなく、涼太が誰かに酷似しているらしい。
「愛のひとつ下って言ってたよな?」
「え?うん」。
いきなりふられて、わたしは突飛な声で返事をした。
「はい。年齢も違うので、一応誕生日を聴いてみたんです」。
「で?」
「それが・・・。兄の卒業した年の・・・・」
「なんだって!?」
日付を聴いたパピィは、目をまるくした。
「それって・・・・ひょっとして・・・・!」
お母さんも驚いてる。
それがどういう日か、わたしにはわからなかった。
けれど、パピィや夕子先生にとって、たいへんな日であることだけは、わかった。
「はい。間違いありません。ちょうど兄が東京に発った日でしたので、よく覚えているんです」。
<本日3話連続です。続けてどうぞ→>
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- MINT倶楽部 第33話(続き)
- MINT倶楽部 第33話
- MINT倶楽部 第32話
やったー(≧∇≦)
涼太くん・・・
気になりますね。
何があったのかな?
復習します・・・
なになになになに?
めっちゃ気になります(>_<)
う~ん、続きがめっちゃ気になる
やっぱり涼太君ネタなんだな?
てか「涼」からするとあのリョウ君くらいしか思い浮かばないんだがそれにしたら年齢が…
わかんないわ(ノ△T)
つかママチャリ…ここでも出てくるのねぇ(笑)
乗せない花ちゃん(笑)
朝から夜の話…
ぱとぱと~(;_;)
ぱとぱとのおかげで駐在所が賑やかになってるんですね!じーんときました。
私も花ちゃんにお菓子作り習いたいな!ケンちゃんでもいいけど‥‥やっぱり怖いから遠慮しときます((笑
涼太のことはどういうことなのでしょう
2話更新ありがとうございますッッ
楽しみにしてます☆
ケンちゃんは結局駐在所に行かずに帰るんですか。せっかく愛ちゃんを守ったのに~。まぁ無事に帰れるといいですね^^;
駐在所メンバーみんなが驚く位の関係が涼太くんにありそうですね。続きをワクワクしながら読みにいきますね(*≧m≦)
飲んだら乗らない…(笑)
大人の標語に爆笑です
乗りたがっても乗せない…うんうん
硝子の友情を花ちゃんもしっかり守ってるんですね
愛ちゃんお気に入りの花さん(元スケバンお蝶夫人)が、パトパト見に来てくれて良かったねぇ。
でぇ、夕子せんせも来て噂のリョウくんについて大人のお話があるようですねぇ・・・。
グレート井上くんが高校卒業して、東京の大学に進学した頃って事でしょうかぁ・・・???
陰湿って ケンぼーが
(≧ω≦)b
涼太くん・・・気になる~~~!!
くろわっサン、お疲れ様です
ミントチョコは、奥様のレシピかしら?(笑)
パトパトが繋いでくれた、ママチャリくん達とのご縁…
愛ちゃんがそんな風に考えられるようになったのも、やっぱりママチャリくんの影響なんでしょうね。
このコメントは管理人のみ閲覧できます
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続きを早く読みたい・・・
でもコメントも入れたい・・・・
・・・・・というわけで、いつもにも増して愛想のないコメントでスミマセン。
急いで続きを読みます!!
あたしも花ちゃんみたいなお姉ちゃんほしい笑
私も花ちゃんみたいな
お姉ちゃんほしいです!笑
涼太くん・・・?
おーッ!!続き見なきゃ!!
涼太君この話のカギを握ってるのかな?
ケンちゃんバイパス行けマスかね・・・?
一体リョータは何者?
下ネタは西条だけの方が…花ちゃん
何かとても深刻そうですね・・・。
つづきも見てみますっ!!
涼太君・・・そっくりさんなのか本物なのか・・・。
ママチャリとママチャリの区別ってそうやってつけるんですねぇ~ww
まだよくわかりませんね~
次の話を見ます
「ママチャリは 飲んでも乗らない 乗りたがっても乗せない」。
ツボにはまりました
たてなくなるまで飲ませれば、乗ることもないとおもいます。
高校卒業してすぐ・・?
大学かな?
愛ちゃんが不良に仕返しされる
涼太の誕生日もあわせて大変だ!
って感じですかねぇ。
乗りたがっても乗れないおいらの立場は・・・・・・?(T.T)
そうなんだ・・・・・・ママチャリくんは『立って』井上くんは『発った』んだ・・・・。
で、誰に似てるんだ?
愛ちゃん、パピィにちゃんと絡まれた事言っとかなきゃ!
何で言わないの。。?
お母ちゃん心配ですよ(ノ_・。)←お母ちゃんじゃないけど。
パトパト元気になってよかった!
涼太くん、だれに似てるの??
やっぱり・・・?
3話先読みして戻ってきちゃいました
パトパトがみんなを引き寄せたのね 動物も念みたいのがあるのかな
ケンチャン 駐在さんに無用な心配させたくなかったのね 愛チャンはパピィに言わなきゃ