ぼくたちと駐在さんの700日戦争

「そんな安請け合いして大丈夫なのかぁー？久保ぉ」
と、普段は「大安請け合い王」の西条くん。

そう。こういうことは、西条くんの専売特許みたいなものであり、だからなんとかなってきた、というところもあります。

西条くんには『万有強引力』という、ニュートンさえ発見していない力が備わっていましたが、久保くんは、クボレンジャーリーダーになったからと言って、そんな力はありません。
むしろ、「カエルの王子様」になって、それは弱まったとも言えます。

「え・・・だ、だいじょうぶだって！」

久保くんも、弥生ちゃんの目前で大ミエ切った手前、引っ込みがつきません。

「井上や村山がウンって言うかぁ？」

「う・・・・」

実は、西条くんが言い出したものも、グレート井上くんや村山くんは、けっして「ウン」などとは言っていないのですが。
気づいていないまま、勝手にコトが運んでいるだけなのです。
それこそが「万有強引力」ですから。

まぁ、ここは久保くんの腕の見せ所。お手並み拝見です。

ただの久保で終わるのか、それともただの久保で終わるのか・・・。

あ？おんなじか？
まー、久保だからな。

が。

「こ、コイツがなんとかする！」

「あ？」

　僕？

「西条。いつもお前がみんなに言うこと聞かせてたと思ったら大間違いだぜ！」

「う！」

「その裏にはなぁ。コイツの並々ならぬ汚さと、人を災難に巻き込むテクニックがあったからなんだぜ！」

えっとーーー・・・。それって褒めてますか？

「コイツがいなきゃ、井上も村山も、いや、ひとりもダマせちゃいないんだからなぁ！」

久保・・・。持ち上げてくれるのはいいんだけど。
ちっともうれしくないんですけど？

西条くん、
「久保・・・言う通りだったぜ・・・」

いやいやいやいや！
そこは妥協しちゃダメだろ？西条！親友として！

「コイツがいなきゃ、俺らなんか、ただの善良な寄せ集めでしかなかった・・・」

こらっ！
こらっ！

「それをコイツひとりのおかげで、立派な極悪グループにっ！」
「そうだぜ！西条！コイツのせいだぜ！」

いやぁ・・・「せい」っていう言い方はおかしいんじゃないかなぁ・・・。
そこは「おかげ」とかが正しい日本語だと思うんですけど。

「久保、俺が悪かった！お前の言った通りだ！ひとっこともちがわねぇ！」

ああ・・・・
ひとことくらいはちがうのでは？

「というわけで頼むぜ！極悪将軍！」
「弥生ちゃんのためにひと骨折ってくれ！悪徳軍師！」

うううう・・・・
なんか「生まれて来てごめんなさい」なんですけど・・・？。

でも。これだけ並べ立てられてもなお、

「すみません・・・おねがいします・・・・」

弥生ちゃんのわずか30度ほど傾斜した頭で、

「ま・・・まかせてくださいっ♪」

気分が晴れてしまうのは、男って、どういう造りになってんでしょうか？神様。


「じゃ、そういうわけで、帰るか」

「いやいや。河野行方不明だろ？ショウジも」

「あ。そうだった！あははは」

そう。1年半つきあい、苦楽を共にした仲間よりも、「知り合って1週間の美人」の方が、ずっとウェイトが高い。

「それが男ぞ！」

なにを博多弁でえらそうに・・・・。

「だいたいマークIIがかたづいてない」

けれども、西条くん予想では、
「マークIIは、もう今夜は現れないだろう」。

僕もこれに同感でした。

そこで、グループを、久保くんを中心にした行方不明調査班と、西条くん、菊池さんを中心としたA町班とに分けました。
西条くんが、「どうしてもA町にあった道場を見たい」と言い出したからです。


「じゃ、0時、アンジェリーナのドライブインで！」

「おお！」

あ、なんかカッコいい。アンジェリーナのドライブイン。
まるでアメリカ映画みたいですが、実は菊池さんの『ニワトリが逃げた食堂』。
でも、青春時代ってのは、なんでも美化したいものなのです。

弥生ちゃんは、菊池さんのGTOで送ることになりましたので、僕は、ひさびさに菊池さんから開放され、孝昭くんの後ろに乗って河野捜索班。

菊池さんは、弥生ちゃんを乗せるってんで、突如室内清掃などを始めまして、マットをはたいたりしてましたが、

　ガチャ。

掃除用具を取り出そうと、得意のトランクリッドオープナー。

「コケーーーーーーー！」

「げ！アンジェリーナ！」

そう。トランクには、アンジェリーナが眠りについていたわけで、またしても飼い主自ら蘇らせてしまいました・・・。

「み、みんなぁ！アンジェリーナ、捕まえてくれ」

「やなこった」
「アホ・・・」
「少しは学習しろ」

「待てーーーー、アンジェリーナーーーーー」

海辺の恋。再び。

「待てってば～～～～～～～～」





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