ぼくたちと駐在さんの700日戦争

「そらー、弥生って姉ちゃんにホレてんだろ」
とは、孝昭くんの見解。

「え？だって？」

西条くんは、初恋の「ゆき姉」をたずねて、わざわざA町くんだりまで行ったわけです。
それほどに一途でした。

「あのなぁー、ゆき姉は、小学生だろ？小学生」

「まぁ、別れた時点では・・・・」

小学6年生です。

「そんな胸も尻もない段階のお姉ちゃんを、いつまでも好きでいられるか？まして西条が！」

「いや。西条は小さい尻も好きだぞ？」

だから、お尻の小さい夕子ちゃんも好きです。

「そういうヴォリューム問題ではなく！」

つまり孝昭くんが言いたいのは、高校生になれば高校生になったなりに「好きな異性」が現れるということでした。

「高校生が小学生をいつまでも好きだ、ってのがおかしいだろーが！」

「うーん。でも西条だからなー。妄想はちゃんと進化してるんじゃないだろうか？」

「お前、女好きな割合にそういうとこわかってねーなー」

「う・・・・・」

「女の成長ってのはな？心身伴っているわけだ。な？」

姉のいる孝昭くんが言うと説得力あります。

「お前、初恋はいつだった？」

「初恋ってー、えと。どの初恋かな？」

「いっぱいあんのか・・・・お前・・・・・？」

「ある」

「バカヤロ！初恋ってのは普通ひとつなんだよっ！一番始めに好きになった女だ」

「それが同時に何人か好きになったんだよねぇ・・・・」

その中には、マンガのサリーちゃんまでいました。

「・・・・・・・」

「あれ？孝昭、なにか気に障った？」

「いや・・・・お前らしいぜ・・・・・」

「？」

「とにかく、そっからひとりを選べ」

「ひとり・・・・・・じゃぁ、サリーちゃん」

「マンガ以外を選べ！」

「じゃーーーー・・・・あっちゃんかな？いや、ひろみちゃん、まてよ？・・・むしろ・・・」

「いいっ！その『あっちゃん』でいいっ！」

「ああ、はい」

「その、『あっちゃん』は今、オカズになるか？」

オカズ・・・・。

「・・・・・ならない」

「だろ？小学校の初恋なんてのはそんなもんだ。西条のゆき姉だって、おんなじだって！」

思春期にあっては、たいへんわかりやすい説明です。

「いいか。西条は、弥生って姉ちゃんに、ゆき姉を重ねてた。境遇も家庭環境も似てる」

「あ、本人もそう言ってた」

「そうやって注視してるうちにな。ホレることはよくあるこった。なんてったって西条は、今現在のゆき姉ってのを知らねーわけだからな」

「なるほど～～～～」

「西条はな。今、A町に行ってんのは、弥生って女を守るため、と見た！」

「え！」

僕はケンイチ兄ちゃんがらみだとばかり思っていたので、これは意外でした。

「アホ。もう引っ越したって男よりは、今いる姉ちゃんだろうが！」

なるほど・・・
弥生ちゃんには、グロリアの脅威は去ってはいません。

ありえる。西条ならありえる。

「さすが孝昭！すごいなー」

「へ。まぁな」


「・・・・で。話は終わったか？」

「あ。はい。終わりました、駐在さん」

「なんだってわざわざ駐在所で話す!?」

「いや。そこは追い出された者同士・・・・」

なにしろ孝昭くんの家で話すわけにはいきません。
孝昭くんの家には、てぐすね引いた早苗さんがいるのす。

「そういうことは喫茶店で話せ！」

「やだなぁ。駐在さん。喫茶店はお金かかるんですよ？」

それにくらべて、ここはコーヒー無料です。

「だいじょうぶです。奥さんがいらっしゃらない時は、自分で入れますから～」

「・・・・あのなぁ？交番のコーヒー、勝手に入れる高校生がどこにいる!?」

「ここに」
「いますけど？」

2人も！

「あ、クリープからニドに変わったんですね！」
「ニドのほうが安いからだろ、きっと」
「あ、そうか！でもクリープがよかったなぁ」

「出てけーーーーーーーーー!!」

追い出されました。
公的機関なのに不思議です。
僕たちとしては、奥さんが帰って来るまでいたかったのですが。


しかし、孝昭くんの読みはさすがです。
西条くんが弥生ちゃんを守ろうとしている。

「言われてみれば確かに・・・・」
思い当たることはたくさんあります。


しかも、その確証らしきものは、翌日、西条くん自らもたらされました。

「おい！劇団の送り迎えから暴走族はずせ」

「え？なんでだ？西条。せっかく頭と交渉が成立したのに」

「ヤツら、グロリアとグルだ」



人気ブログランキング｜ブログ村ランキング

　第81話へ→

　▲後編目次へ

関連記事

• 銀河戦隊クボレンジャー 第81話
• 銀河戦隊クボレンジャー 第80話
• 銀河戦隊クボレンジャー 第79話