ぼくたちと駐在さんの700日戦争

「クボレンジャーって・・・。ひょっとして久保の親戚も？」

「そう。むしろそっちのほうが重要だ」

だから『心霊研究会』ではないのですかが。

「そっちのほうって・・・。お前、まだ、たいして知り合いでもないのに」

「え？あれだけ行動ともにすれば、親友だってー」

「え？お前の親友の基準て・・・・・・」
西条くん、なんかすごくショックのようです。

「さっきも、お前、ケンイチ兄ちゃん利用したろー！まったく知りもしないくせに！」

「え？そんなことないよ。僕が利用したのは、ケーキ」

「ケ・・・ケーキぃ？？？」

ケンイチなんて名前、一度たりとも出していません。

「なんか、『まんじゅうこわい』と似てんなー」

＜『まんじゅうこわい』＝有名な古典落語。上方版と関東版とでストーリーが若干異なる＞

案の定と言うべきか、相手はケンイチさんを、ものすごく恐れていました。
今日「やられたことを知っている」ことにしたのですから、早苗さんたちの心配は、もうありません。

となれば狙いは、

「アンジェリーナだ！」

「いや・・・ニワトリは狙わないだろうけど・・・・」

その通りです。
狙って来るなら、「弥生さんを知ってる菊池さん」

間違いありません。

「えっとー・・・・アマ・・・アマ・・・アマー・・・・」

「アマンダ」

そう。菊池さんが率いる暴走族『アマンダ』。
小川たちにとって、僕が「ケンイチさん」である限り、そこしか狙い目はないはずです。
前回もそこから、実にあっけなくほころびました。

暴走族相手ですから、小川たち4人で来りはしないでしょう。

そうなれば、相手は「頭たちが率いる」あの浜の暴走族。

「ヘタすると、暴走族同士の抗争になるかも」

その際、久保一族の持っている大型バイク連は、たいへんな戦力です。

「なるほどな。確かにクボレンジャーだな！」

「まぁ、久保にも、たまには華もたせないと」

なにしろ劇団じゃ『雲D』。

相手は、むしろ抗争になるところを狙って来るかも知れません。
キジマタクロウがN署にいるのであれば、市内の暴走族ひとグループを押さえるのは簡単です。

「あ。そうだ。いっそ、あのへんの暴走族、ぜんぶ巻き込んじゃおうか？」

「いや・・・巻き込んじゃうってお前・・・・」

「警察も手をやくくらいの。そうすれば、どれがアマンダだかわかんなくなるだろうし。あははは」

「あははって・・・・・・・。やっぱ運動会がオリンピックになってるよなぁ・・・」

「どういう意味だよ」


示談屋をひっかけたのですから、菊池さんがいくらバカでも、もう入院していることはできません。
その日のうちにムリヤリ退院していて、彼なりに「対抗する準備」を始めていました。

　コケ～
　　　コケ～
　　コケ～
　コケ～

「くっそ～～～。このニワトリが全部ウチの兵隊だったらなー・・・」

そりゃぁ、500羽もいれば無敵の暴走族ですが、菊池さんの言うことは聞かないでしょう。
アンジェリーナ1羽でも、あのありさま。

「アマンダって何人いるんですか？菊池さん」

「14人」

「え！それっぽっち？」

「みんなよー、デカいとこに移ったんだ」

（昭和50年代。暴走族は巨大化し、覇権を求めて小さいグループを大きなグループが飲み込む大再編がおこった）

まぁ、軽トラで暴走族してりゃー、そりゃ抜けます。

「ってことはー・・・」

これでクボレンジャーを含め、持ち駒は全部で24、5人といったところ。
抗争になったら、けっして有利とは言いがたい情勢です。

「相手、あの浜のヤツらなのか？まちがいねーのかー？」

「確信はありませんけど・・・」

襲われた本人がわかっていないんだから、僕たちにわかるはずがありません。
でも、小川に恩義がある限り、今回は出て来るでしょう。

「まいったぜぃ～～～～～」

菊池さんは早くも弱気。

「まぁ、こっちでなんとかしますよ」

「こんなことなら、早苗の写真、少しとっとくんだった・・・」

反省してんのはそこ!?

あいかわらずめでたい人です。
そもそもアレ、「ジェミー」ですから。


久保くんは、西条くんに言われるまでもなく、「弥生さんのためなら！」久保一族を集めることを快諾。
よほど弥生ちゃんを気に入っているようです。

一族には、ショウジ以外にもツブが揃っているらしく、

「そん中でも、ショウイチってのがスゴくってよー」

「あー、この前いた？」

「いや。あのショウイチじゃなくってよ！わかんねぇヤツだなぁ」

他にもショウイチがいるのか？
どうなってんだ？久保一族？

「こないだのショウジのアニキに決まってんだろ？」

だから、どのショウジだよっ!!?




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